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おばあちゃん! という元気の良い声。
縁側にピンと伸ばした姿勢のまま、品の良さそうな老婆が、穏やかながらどこか凛とした雰囲気で、その良く通る声に振り返る。
「良く来たわね」
自分に駆け寄る子供は、愛する孫。目に入れても痛くない。
小さな体の体当たりを少しだけよろけながら受け止めると、孫を追いかけてきた娘に軽く叱られている。危ないでしょう、と。
祖母に挨拶を済ませた孫が、定例行事とばかりに家の中へ。仏壇に向かう。
いくつかの飾られた写真の一つは、まだ若い男性のもの。
もう涙は出ない。
「母さん、ただいま」
久しぶりのような、そうでもないような。
それは黙っておく事にした。老婆はにっこりとほほ笑む。
孫がお菓子をねだってくる。
仕方ないわね、と老婆は立ちあがった。
歳の割にはしっかりとした足取りで。
その背中を、娘が呼び止める。
「母さん、疲れてない?」
彼女の子供たちはよく、彼女にその質問をした。
そこに込められた意味がなんであれ、彼女の答えは変わらない。
「大丈夫よ。心配しないで」
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