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ごろん、とだらしなく寝転がった部屋の床、見上げるようにして覗いた窓の外は星空だった。
もうこんな時間か、なんて少年は思う。
何故かこんな時間まで部屋に入り浸る少女を振り返りながら。
「帰んなくていいのかよ」
少女は、部屋の主たる少年のベッドの上を占領しながら唇を尖らせる。
「来たばっかりなのに…」
「遅くに来るのが悪いんだろ」
学校から直接寄り道したとばかりの制服姿で少女は、あぁーっ、と間の抜けた叫び声を上げてベッドに突っ伏す。
「…もうやだ…疲れた…」
悲壮な声色に、しかし少年は取り合う素振りも見せずに、本棚から読んでいた漫画の次の巻を取り出す。
「ほら、出たよ」
「なにさ」
「口癖だろ。もうやだ、疲れた」
少年には、何か事あるごとに聞いた気がしている言葉だった。
しかし、やはり少女は機嫌が悪そうにじと目で少年を見やる。
「…みんなの前じゃ、言わないもん」
「知ってるよ」
誰が言ったわけではないけれど、二人の間では周知の事だった。
で? と少年は続ける。
「今度は何に疲れたんだよ――ああいや、言わなくても分かる。生徒会長が嫌になったんだろ?」
少女は、通っている中学校の生徒会長だった。
ベッドの上でごろんごろんと駄々をこねるように転がり、うぅ~と呻き声を上げながら情けない泣き事を言っている少女は、彼女を慕う後輩や、彼女を誇りにする先生たちにとっては、文武両道才色兼備威風凛々の生徒会長なのである。
呻き声に一段落をつけた少女は、今度は枕をギュッと抱きしめて背中を丸める。
「嫌になったわけじゃ、ないけどさ…ないけど…疲れちゃうことも、あるの」
ふうん、と少年は返す。
勤めて、なんでも無い事のように。
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