8年目+2週間

7/9
302人が本棚に入れています
本棚に追加
/11ページ
恐る恐るクッションを足元に置き、 震える声で訊いてみた。 「あの、どういったご用件でしょうか?」 すると、彼の答えは驚くべきもので。 再び私はクッションで口元を押さえる。 「あれ、聞いてない? 今日から俺もココに住むんだけど」 (え、ええええッ?) 続けて彼は言う。 「可愛い妹が、生まれて初めての失恋で、 自殺しそうってアンタの姉貴が心配して。 それで俺に監視しろって。 まあ、俺も実家住まいだったところを、 あのバカ両親が家を売っぱらって、 ド田舎に引っ越しちゃってさ。 2カ月も女んトコを転々としてたんで、 好都合だったんだけど」 き、聞き違いかな? 一緒に住むって。 しかも、『女んトコを転々』ってソレ、 彼女が複数いるってこと? ま、まさかこんな好青年が。 「あの、ココに私と住むって、 一応、私も女なので、その…」 好青年は、小バカにした表情で言う。 「俺、女には不自由していないんで。てか、 アンタさ自分がそんな手を出されるような、 そんな色気が有ると思ってる?」 そ、それを言われちゃあ、 何も反論出来ない。 「俺にも選ぶ権利、有るっつうの。 あと、安心しろ。付き纏われるのが嫌で、 基本、自宅に女は連れ込まない」
/11ページ

最初のコメントを投稿しよう!