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「な、なんって勝手なの?!
ほんと私が怒鳴り込みに行ってやろうか?
由布、なんで怒らないのよッ。
毎日毎日、由布だって働いているのに、
家事は全部やらせておいて。
掃除、洗濯、料理、箸すら洗わない男が、
よくそんな偉そうなこと言えたわね??」
ここは街角のコーヒーショップ。
ここにいる佳純は中学時代からの親友だ。
治人との馴れ初めも、そして別れも、
これですべて知っていることになる。
治人の言葉を信じ、素直に部屋を出た。
そう、丸ごと信じていたのに。
後日、知ってしまうのだ。
…彼に新しい彼女がいたことを。
>ヤメろよ、髪を茶色く染めるのとか。
>遊んでる感じで俺、絶対にイヤだから。
>チャラチャラした服は、みっともない。
>もっときちんとした格好しとけよ。
>ヒール靴は俺が低く見えるから履くな。
言われた通りにして、生きて来た。
最後には、この人と一緒になるからと。
他の男性に媚びを売る必要はないからと。
…それが。
同棲していた部屋を出て、
姉夫婦のマンションに身を寄せ。
その姉と一緒に買い物に出掛け、
偶然見てしまったのだ。
茶色い髪をふわふわ揺らし、
今どきの服を着てヒール靴を履いたコと、
仲良く腕を組む治人の姿を。
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