8年目+2週間

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ただただ、悲しくて。 姉には悪いと思ったが、 日曜午後の、最も人通りの多い繁華街で、 ずっと泣き続けた。 ふられたことが悲しいのではなく、 宝物のように大切にしていた日々が、 すべて無意味になった気がしたから。 私たちだって、 最初から冷たい関係だったのでは無い。 手を繋いだだけで大騒ぎし、 ぎこちないキス、 初めての夜…。 すべてが万華鏡のように キラキラと輝いていた時期もあった。 この人しかいない、 この人もそう考えていると思い込み、 気に入られることだけを選んだつもりが、 結果、心を遠ざけてしまったなんて。 はは。 8年間、無駄にしちゃったなあ。 初めての恋がくれたのは、 生活感たっぷりで、 誰からも相手にされない地味女の外見と、 自分では何も決められない、 優柔不断なこの中身だけ。 「…う?由布ってば。 じゃあ、住むところは大丈夫なのね?」 「え、ああ、ゴメン佳純。 そうなの、姉夫婦が札幌転勤になって、 その間、マンションを貸してくれるの」
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