8年目+1カ月+3週間

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それから1週間が過ぎ、 チカさんとは連絡が取れないまま。 店に行けばきっと会えるかもしれないが、 なんだかソレをしてはいけない気がした。 きっと、これが彼の答えなんだ。 勢いで付き合ってみたけど、 私ではダメだって気づいたんだろうな。 あの人は優しいから、それが言えなくて、 悩んだ挙句、連絡を絶ったのだろう。 …ん、大丈夫。 2回目だから、免疫ついたみたい。 残念ながら一昨日、芹香ちゃんも 意中の彼に別れを告げられ、 これで、めでたく失恋2人組だ。 きっと一晩中泣いていたのだろう。 目をポンポンに腫らしながらも、 彼女は明るく笑って見せている。 泣きもしない私はきっとチカさんに、 恋していなかったんだろうな。 「…コ、コンパしよっか、また」 真希先輩はそう言うけど、 唯一のツテはチカさんだったワケで。 誰に頼めばいいのやら。 というか、それより当分恋愛はいいかな。 などとボンヤリ考えながら、 会議室に向かって歩く。 懐かしい匂いに、ふと足が止まった。 …そっか。この匂い、治人と同じ香水だ。 ふふ、変なの。 顔は忘れてる癖に匂いは覚えてるなんて。 自虐気味に笑っていると横のドアが開き、 小会議室から治人が出て来た。
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