8年目+1カ月+3週間

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几帳面そうなウエイターが困っている。 当たり前だが、 この洒落たイタリアンレストランで、 私たちは注目の的となっているようだ。 「何度も言うよ。 もう瑞姫のことは愛していない。 これ以上、一緒にいることは無理なんだ」 うわ~ん、と大声で泣き出し、 元カノは最後の一撃を、 チカさんの隣りの椅子に向けて放った。 床に打ち付けられ、椅子が壊れる。 それを見ても動じず、彼女は叫んだ。 「あんたなんか、大嫌い! 分かったわ、別れてやるから安心して!」 「ごめん瑞姫。本当にこれでサヨナラだ」 強気な言葉とは裏腹に、 その白い頬には涙が大量に流れていたが、 それを拭きもせず、元カノは去って行く。 後に残されたチカさんと私は、 事態収拾に尽力し、食事を摂れたのは それから2時間後のことだった。 「ごめん、本当にごめんね由布ちゃん」 「もうイイですってば。 チカさん、今日で一生分の『ごめん』を 使い切るつもりですか? ところで彼女、チカさんが好きなのに、 なぜフランスに行ったんでしょうか?」 「俺の愛情を試したかったんだってさ。 ったく、面倒臭い女だよ」 複雑な気分だった。 彼女は、とてもチカさんを愛していて。 なのに私なんかに奪われたのだ。 こんな、なんとなく付き合っている私に。 …湧き上がる罪悪感は、消えなかった。
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