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突発的にイブの予定が埋まるかもしれないから
…と彼からの熱心な説得を受け、
取り敢えず予約だけ入れて、店を出る。
帰宅早々、涼介さんが私に付き纏い、
嬉しそうにこう言った。
「イブの夜、『レ・サヴール』に予約したんだ。
本当は満席って断られたんだけど、
コネを使って、ムリヤリ入れて貰ったから」
「すごいねえ、高級フレンチでディナーなんて。
あそこのコース料理、最低でも5万円でしょ?」
そっか。やっぱりこの人は予定アリなんだな。
じゃあ、私も頑張って楽しもう。
「由布、何が欲しい?」
その質問の意味が分からなくて。
無言のまま瞬き多めで返すと、彼はまた訊ねる。
「クリスマスプレゼント、奮発するからさ。
何でも言ってよ」
「い、要らないよ。私、そんなの貰えない」
なんで?と不思議な顔をされ、
私はもう一度繰り返す。
「か、彼女に買ってあげなよ。
そんな全員に買ってたら、お金無くなるよ?
とにかく私にはそんな気遣い不要だからね」
すごくおかしな顔をされた。
たぶん、今まで付き合ってきた女性と、
反応が違うんだろうな。
でも、これは本心だ。
「…えっと、『彼女』って由布だよね」
「え、うん。私以外の彼女に買ってあげて」
「…あれ?なんか、俺、おかしい、あぁ?」
「な、なに?」
そのまま、涼介さんはその場で座り込み、
何やら真剣に考え込んでしまった。
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