8年目+7カ月+1週間

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それから暫くして、彼は言う。 「何から話せばいいのかな。 あのさ、日頃の行ないが悪いから仕方ないけど、 俺、いま由布だけだよ?」 ……。 なんで最後、語尾を上げるのかな。 それってまるで疑問形だし。 私に訊いてるってこと? だとしたら、日本語、おかしいよ。 「…なあ、由布、なんか言って」 「あのね、たぶん私、自信が無いの。 それは、涼介さんだけのせいじゃなくて。 8年間付き合ったけど、離れて行った元カレと、 アッという間に元カノとヨリを戻したチカさん。 …ね? 皆んな私から離れていくの。 きっと自分に魅力が無いんだろうなって。 どんなに外見を磨いて、周囲から褒められて、 高校時代の同級生から熱烈に好きと言われても。 繋ぎ止めるチカラが無いんだと思う。 だから、自分の中で涼介さんには 他に彼女がいるって思い込もうとしたのかも。 そうすれば、 また離れて行っても傷つかないでしょ? …ねえ、涼介さん。 どうすればいい? 恋をするのが怖いの…」 言葉にして、 初めて自分の本心に気が付いた。 そうだ私、涼介さんのせいにして、 本気で恋することから逃げていたんだ。
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