8年目+7カ月+1週間

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じわじわと視界がボヤけて、 スルリと涙が頬を伝う。 それを見て笑いながら涼介さんは、 私をそっと抱き締めた。 「バカだなあ、由布は。 俺も怖いに決まってるだろ」 「…う、ぐすっ。そ、そうなの?」 「本気になればなるほど、 相手を失う恐怖も大きくなるんだよ」 そう言って彼は、部屋着の袖で私の涙を拭き、 その場で座らせてから、自分も腰を下ろす。 「だから、怖がってくれて有難う。 好きだよ、由布。 『俺を信じて』と言っても無理だろうから、 今はこう言っておく。 『やってみようよ』」 長くて美しい指が、 また溢れてきた涙をそっと掬う。 その指をすり抜けて、スウッと涙が零れた。 「由布と俺で、やってみよう。 女を信じられなくなってた俺が、 ようやく見つけたんだ。 なあ、お前は気づいてるのか? 俺のこと、好きで堪らないって目をしてるのを。 だったら気づけよ。 俺も同じ目で、お前を見てるはずだから」 …うう、ぐ。本当だ。 私は今まで何を見ていたんだろう。 この人の何を。 女遊びが激しくて、誰とも本気にならないって。 そんな男が、こんな目をするはずがない。 これは、恋をしている男の目だ。
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