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じわじわと視界がボヤけて、
スルリと涙が頬を伝う。
それを見て笑いながら涼介さんは、
私をそっと抱き締めた。
「バカだなあ、由布は。
俺も怖いに決まってるだろ」
「…う、ぐすっ。そ、そうなの?」
「本気になればなるほど、
相手を失う恐怖も大きくなるんだよ」
そう言って彼は、部屋着の袖で私の涙を拭き、
その場で座らせてから、自分も腰を下ろす。
「だから、怖がってくれて有難う。
好きだよ、由布。
『俺を信じて』と言っても無理だろうから、
今はこう言っておく。
『やってみようよ』」
長くて美しい指が、
また溢れてきた涙をそっと掬う。
その指をすり抜けて、スウッと涙が零れた。
「由布と俺で、やってみよう。
女を信じられなくなってた俺が、
ようやく見つけたんだ。
なあ、お前は気づいてるのか?
俺のこと、好きで堪らないって目をしてるのを。
だったら気づけよ。
俺も同じ目で、お前を見てるはずだから」
…うう、ぐ。本当だ。
私は今まで何を見ていたんだろう。
この人の何を。
女遊びが激しくて、誰とも本気にならないって。
そんな男が、こんな目をするはずがない。
これは、恋をしている男の目だ。
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