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遡ること30分前。 一本締めで歓迎会は終了し、それぞれ店を出た。 私も一旦は店外に出て、 タクシーを拾える場所に向かおうと思った矢先、 治人の姿を発見。 なんとなく気まずくて、素早くまた店内に戻り、 そこで、森田さんが困った顔をして言うのだ。 「モアが女子トイレで吐いてるみたいでさ。 ちょっと稲井田さん、様子見て来てくれない?」 「あ、はい。分かりました」 女子の一群は早々にタクシーに乗ったはずだが、 モアさんだけ残ったのか? いや、でも『アルコールは苦手』だと本人も 言っていたし、念のため見て来よう…。 そう思ったのが運のツキ。 女子トイレには誰もいなくて、 出た途端、森田さんに拉致されて。 「モアさん、いませんでしたけど」 「そりゃそうだろうね。もう帰ったし」 「……」 「……」 無言対決。 「あのさ、一杯だけ付き合ってくれない?」 「ごめんなさい、明日も仕事なので帰ります」 「相談したいことがあるんだけどさ」 「相談ですか?」 ジーーッとその目を見つめる。 あ、目を逸らした。 そんなワケで、更にジーーーーッと目を見る。 あらら、また逸らされた。 「相談なんて嘘ですね?」 「…うん」
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