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2人とも必死の形相で、
ひたすら『お願い』と言い合っている。
知らない人が見たら、
かなり奇妙な光景だと思う。
「由布、俺も悪いところを直すから。
お願いだから、また一緒に頑張ろう」
「ダメなんだって、お願い、分かって」
「そんなことを言わずに、お願いだよ。
雨降って地固まるって諺もあるだろう?」
「お願い、もう無理なんだってば」
「やってみないと分からないだろ?
先のことなんて。お願いだから戻ってよ」
「やだ、もう。お願いだから…。
涼介さん、涼介さん!!」
感情が高ぶったせいか、
まるで子供みたいに、
その人の名前を呼び続ける。
「涼介さん、涼介さんッ」
「は~い!」
…へ?
固まる私と治人。
シリアスドラマが一転、
コメディ番組に変わったみたいに。
軽~くその人は出て来た。
「待たせたな!由布ッ!!」
「りょう…す…け、さん??」
自分で呼んでおきながら、ナンですけど。
なんでココにいるのかな。
なぜか寄り目になって現実逃避する私を、
治人から引っぺがし、
涼介さんは腕の中に、私を閉じ込めた。
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