再び0+1カ月+2週間

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その晩、涼介さんの予約した 高級フレンチレストランで。 姉の言葉をそのまま涼介さんに伝えると、 短く『ははっ』とだけ笑い、 …あとは何も言わなかった。 なんだか、らしいなと思って。 ドラマや映画のセリフを借りて、 美辞麗句を並べようと思えば出来るけど、 この人は、 何も言わない方を選んだのだ。 一番伝えたい気持ち。 それに近い言葉を見つけようとして、 探したけど、見つからなくて。 それならいっそ言わないでおこうと、 そう思ったのだろう。 人を好きになると、もどかしく歯がゆい。 どんどん感情が溢れて来るのに、 それを伝える術が、あまりにも少なくて。 言葉では足りないし、 カラダでは一時しのぎだ。 「ゆ…う」 そのくせ、その一瞬の表情だけで、 全てが伝わってしまうこともある。 ああ、もう、 そんな、そんな顔、 私以外に見せないで。 ゆっくりと3時間掛けて、 ようやくデザートまで終わり、 給仕の男性がこちらを見て微笑んでいる。 その人をチラリと見たかと思うと、 涼介さんは私の左手をいきなり握り、
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