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そっと薬指にリングを嵌めた。
「改めて言うよ。俺と結婚してください」
涼介さんは、珍しく前髪を上げていて、
額にはうっすらと汗が滲んでいる。
姉の言葉が頭に浮かぶ。
>ねえ、由布。
>少しだけ勇気を出してごらん。
>まだまだ知らない世界が、
>ワクワクするような世界が、
>きっと待っているんだから。
うん、お姉ちゃん。
全然怖くない。
この人となら、どこへでも行けるよ。
「…はい。喜んでお受けします」
「ううッ!よおッしゃあ!!」
涼介さんが右手を上げると、
それを合図に給仕さんが奥に消え、
そこから生バンドが登場。
ムードたっぷりなジャズを奏でだす。
「な、なんなのコレ?」
「ん。最高の夜にしたくてさ」
そりゃもう注目の的になっているのに、
彼は、満面の笑みで聴き入っている。
ま、いっか。
幸せそうだし。
ていうか、私も幸せだし。
ああ、またその顔。
あまくて、あまくて、あまい、その顔……。
--END--
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