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その瞬間、手が触れた。
ビクンってお互いなったけど、
わざと気づかないフリして、
そのままずっと一緒に傘を持ち続けた。
だんだん治人の手がジンワリ汗ばみ。
私も緊張しまくってた。
ああ、そんな時もあったっけ…。
ブルルル、ブルルル。
懐かしい気持ちに浸っていると、
マナーモードにしていたスマホが震え、
画面には『涼介さん』の文字が。
それで私は現実に戻り、治人の手を離す。
「ごめん、彼から電話なの。
ちょっとあっちで話してくるね」
「…ああ」
人気のない廊下に出て、電話に応答する。
「も、もしもし」
「ゆ~う。どうした?着信あったけど」
「うん。急遽、打ち上げに出てるの。
そっち着くの深夜0時近くになるかも」
「分かった。気をつけて帰って来い。
駅からウチまでは、タクシーを使えよ」
あれれ?
意外とスンナリお許しが出ちゃった。
「はあい。あ、ねえ、晩御飯は何を…」
食べたの?と訊きたかったのに、
いきなり背後からスマホを奪われ。
振り返ると、そこには
「は、治人?何するの??
私いま、彼と電話中なんだけど」
「ああ。俺からも話あるから、貸して」
え、えええ?
な、なになに、何を??
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