再び0+1カ月+2週間

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「もしもし、俺、由布の元カレで 大木治人って言います。 悪いけど由布、返してください。 コイツ、俺のだから。 アンタにちょっと貸しただけで、 コイツ、俺のだから。 返してもらう。 もう絶対に離さない。 幸せにするから、アンタは諦めて。 頼みますッ!!」 スマホを持ったまま、深々とお辞儀し、 治人はそのまま電話を切った。 …かと思うと、ゆっくりと、 まるでスローモーションみたいに、 私を抱き締める。 「ちょ、治人?! やめ、こんな、もう、おかしいよッ! 貸した返せとか、私をモノみたいにッ。 私の気持ち、考えてよ。 私がいま好きなのは、あの人なの。 お願い、もうこんなこと止めて…」 必死でそう訴えているのに。 抱き締められたまま、その顔が近づく。 キスされる! …そう思い、必死で顔を逸らしたら、 唇は方向を変え、軽く私の頬に触れた。 「もう自分でも止められない。 止まらないんだよ。 お願いだ、俺を拒まないでくれ。 お願いだよ。なあ、由布」 「ズルイよ、そんなの。 やだもう、私もお願いするわ。 お願い、離してよ、お願い、お願い」
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