第1章

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そんな私を、昂さんはニヤニヤ見つめ、 それからいきなりオデコにキスをする。 寝起きで頭が回らない上、 こんな無防備な状態のときに。 なんかもう、抵抗するのも面倒臭いが、 一応、拒否っておかないと。 「昂さん、私も嫁入り前の娘なんです。 百歩譲って同居を認めるにしても、 本人の意志を確かめずにキスするの、 ヤメてもらえませんか?」 その笑顔が一転、驚きの表情へと変わる。 「え。まさか嫌だった?」 「…は?」 なんだ、その自信は。 そんな9年前のおねだりが、 今でも有効だと思っているのだろうか。 いやいや、それよりも、いま何時だ? 慌ててスマホを確認すると、8時45分。 約束の15分前だ。 こんなことなら西村さんの厚意に甘えて、 午後から活動開始にして貰えば良かった。 悔やんでも、時すでに遅し。 不毛な会話を切り上げ、 着替えるから出て行ってとお願いするが、 昂さんは嬉しそうな顔をして、動かない。 「あと15分で人が迎えに来るんですッ。 着替えて、お化粧しないと。 あああッ!! それ以前に私、昨日お風呂に入ってない。 シャワーを浴びなくちゃ。 やだもう、あのヒト几帳面だから、 早目に着いちゃうかも」 軽いパニックに陥る私を後目に、 昂さんは余裕の表情で微笑む。
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