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話は9年前に遡る。
その頃から兄は、ゲームおたくで。
それを極めて、現在は大手ゲーム会社の
サウンド制作などを生業としており。
とにかく当時は地味で、暗くて、
あまり友人はいなかった(今もだけど)。
そして、家族に愛されて育った私は、
反対に家族のこともすごく愛していて、
『守ろう』と心に決めていたのだ。
…気弱だが、心優しい兄を。
だから初めて兄が昂さんを連れて来た時、
『絶対カモにされている』と思い込んだ。
スクールカーストの頂点に君臨する人が、
兄と仲良くなるワケがない。
ムリヤリ宿題させたり、
または、お金を持って来させたり。
そんな裏があるに違いないと疑い、
それを阻止すべく、彼らに纏わりつく。
…が。
予想はことごとく裏切られ、
驚くほど2人は仲が良かったのだ。
というか、昂さんの方が成績良いし。
昂さんの財布、いつも万札入ってるし。
兄よりも優れているはずのその人は、
笑いながら私に言う。
「芹香ちゃん、俺のこと疑ってるだろ?
安心してよ俺、本当に弘樹が好きだし。
傷つけたりしないから、
そんなに睨まないで欲しいなあ」
わお、兄の良さが分かるなんて!!
なんて素晴らしい人なの?!
というワケで、
十代の恋なんて単純で、
瞬殺で好きになってしまうのだ。
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