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いつもなら無視をしていただろう。でも今回だけは何故か無視してはいけない、この現実に目を向けなければいけない。
そう思った。
さっきからずっと心拍数が高く感じる。緊張しているのだ。親に返信するだけなのに。
スマートフォンの文字を打ちながら消し、消しては打ちを繰り返す。
(言葉が見つからない……なんて返せば…)
好きな人に告白する時の気持ちを思い出した。
もちろんまったく違う状況なのだが、人とはどこかに常に思い当たる出来事があるものだ。
とにかくこの出来事に何を言っていいのかわからないということをメールにすることしかできなかった。
[うーん、もう言葉にならないですね。自分の父親なので何も思わないとは言えないけど、正直人ってここまで落ちて行ってしまうものなのかなと。元々人脈とか義理ってのをまったく大事にしてこなかった人だから誰からも助けてもらえない。こうやって家族も無くした人に今更俺は何かをしようとは思えないけど。]
本当は多分もっといろんなことを言いたかったんだと思う。でも敢えて淡白に、言葉を選んで当たり障りのない無難な返信しかしなかった。
本気で全てを出してしまったら多分俺は泣いてしまうから。
親の情けない人生なんて考えたくもない、親はいつまでも子供を心配する側であって欲しかった。子供に同情すらされなくなった親の事なんて見たくも聞きたくもない。
その後の母親の返信によって少し冷静さを失い、俺は言ってはいけないことを、いや、もしかしたらみんながその言葉を言いたかったのかもしれない。
人としては最低の一言を発してしまった。
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