ふたりの果て

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おれは、手すりに歩み寄って、そこに手を置いた。 「たまにさ、早起きして朝焼け見るのがすごい楽しみなんだよね」 後ろで矢野が言った。 「きれい過ぎて、この世の憂さをすべて忘れられるっていうか――」 おれは空を眺めたまま、…そうだね、と呟いた。 「だからさ」 と、矢野が後ろから、おれの身体を抱きしめた。 「ずっと亘にも見せたかった」 おれは、思わず肩越しに振り向いた。 矢野が微笑んだのがわかった。 「いつか一緒に見られたらなあって思ってた」 「………」 「夢がかなった…」 矢野が、そっと言った。 声がでなかった。 何か言いたいのに、何も言えなかった。 だから、おれの腰を抱きしめる矢野の両手に、自分の両手を重ねた。 少しして、やっと言えた。 「…おれも、夢かなったよ」 「…どんな?」 「…あとで言う」 「本当に?」 本当、とおれは首をねじって、矢野の口元に軽くキスした。 すると矢野は、おれの唇に真面目なキスを返した。
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