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 言葉にならない想いの全てを込めて告げれば、柚木の目がこれ以上ないほどに見開かれた。  その目に浮かんだ涙が、瞬きと同時に由良の頬に降ってくる。 「っ、ごめ……」  頬に伸ばされた手を取り、由良はその指先にキスをした。 「俺は、泣くほど嫌われているわけか」 「そんな……解ってるくせに」  涙を湛えたままで、柚木が笑う。つられるようにして、由良も微笑んだ。  柚木が腕の中で笑ってくれる。それだけで温かい気持ちに満たされる。  するりと由良の拘束を抜け出した手が、短い黒髪を撫でた。 「ねえ、何で髪の色、戻したの?」  何の気負いもない質問に、今度は由良が目を見開く。 「お前……覚えていたのか」  うん、と頷いた柚木は、むしろ不思議そうに由良を見つめ返した。 「銀に青のメッシュだった。いくら忘れっぽい俺でも、さすがに一年も経たないのに忘れないよ。何で?」 「いや、あの時のことをクラスメイト達に言わなかったから」  ああ、と柚木は何でもないことのように言った。 「あの時、同じ後期を受けた子がいたんだよね。受験当時のトモちゃん、すごく目立ってたから。俺が話をしたら思い出すかもと思って、言わなかった。ああいう場で話の中心になるの、嫌なんでしょう?」 「その割には、引っ張り込んだよな。同じベッドに寝ていると公言して……俺がどれだけ肝を冷やしたか、判るか」 「だってトモちゃんモテるから、女の子たちにも牽制しときたかったの。ベッドの件は言いすぎたなって思ったから、誤魔化してくれてよかったよ。嘘までつかせて、ごめんね」  柚木の思いやりは、由良の想像を軽く超える。  守っているつもりが守られて、支えているつもりが支えられている。
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