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カサカサと風に煽られたチラシが、砂埃と一緒に路地に舞っていた。
車も通らない狭い道には、至るところに新聞紙や段ボールで暖をとる小汚ない連中が座ったり寝転んだりしている。
「三丁目のレストランはもうダメだな。殺虫剤を撒いてやがる」
「一丁目にできた新しいコーヒー屋は、たまにいいモン落ちてるってよ」
路地の奥で、空き缶に材木の切れ端を入れ火を起こしている二人の浮浪者が、情報交換とばかりに顔を寄せあっている。
ビルとビルの合間にいるのは、もちろん風から身を守るためだ。
だがそこはそれほど広い場所ではなく、常連の者だけが立ち寄り、身を横たえれる場所だった。
その数ブロック先にある公園では、段ボールや通気性のないシートで囲った小さな部屋が乱立している。
もはや公園の体はなさず、行政でも抑えきれないほどのホームレス達がそこを占拠していた。
年令は様々で、定年退職をした老人から、新卒者のような若者、さらには年端もいかぬ子どももそこの住人となっていた。
みな一様にいつ洗ったのかもわからない汚れた服を着て、手袋の代わりに切り裂いた布を手に巻いている。
中には新聞紙に穴を開け、そのままそれを被っているものまで......。
その公園の中央にある噴水跡地に、二人の子どもがいた。
頭ひとつ分の身長差がある。兄弟なのだろうか。
薄汚れた長袖長ズボンから見える手足は細く、頼りない。
「しげちゃん……疲れた……もうイヤだよ……」
小さな方の子どもが俯き、すんすんと泣いている。
流れる涙は、頬の汚れを落とし、白く濁る。
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