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「なつみ。がんばれ。もうちょっとで明日の分まで調達できるんだ。明日は大雪だって政さんが言ってた。今日のうちに動いとかないと……」
しげと呼ばれた男の子は、しきりに身を小さくしてすすり泣くなつみを励ます。
だが、その目にも透明なものが浮かんでいた。
今日は朝早くから根城から出て、街中の飲食店のごみ箱を漁っていた。
だが、経過は思わしくなく、先に大人に取られたり、店主に見つかり追い払われたりと散々だったのだ。
いくらなつみより年上のしげだって、まだまだ子どもである。惨めさや寒さが募って泣きたくもなるだろう。
だが、自分達を養うのは自分達しかいないと心に強く言い聞かせ、汚れた袖でそれを拭うと、またなつみの肩を掴んだ。
「な? もうちょっとだけ頑張ろう。それでもダメなら、明日配給があるかもしれないからそれを当てにするさ。な?」
自分よりも大きい手に励まされ、なつみは嗚咽を堪えながら頷く。
「っく、う、うん。ひっく」
二人は骨ばった手を繋ぎあわせ、今度は朝とは反対方向の東の方角へと向かう。
ざわざわとした浮浪者たちの腰の合間をぬい、冷たい風の吹きすさぶ街へと足を踏み出した。
「しげちゃん……寒いよぉ」
しばらくすると、なつみがぽつりと呟く。
「……そっか。何かあったかいものあるといいな」
それが叶わぬものだとしても、小さな同行者の気力が萎えないように明るく伝える。
「しげちゃんは? ……寒くないの?」
「おれは寒くないよ? だってなつみと手を繋いでるから」
冷えきった二人の体温など、与え合うほどのものはない。
でも確かに繋いだそこには、わずかながらでも熱があった。
「そっかぁ。……なつみも手はあったかい気がする……」
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