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「だろ?」
そう言って笑うしげの頬はそげて青冷めている。
まだなつみの方がふくよかかもしれない。
優しいしげは、いつもなつみに食べ物を多目に分けてあげていた。
五件分ほどごみ箱をあさり、わずかな果物と、食べかけのパンを手に入れた二人は、持っていた汚れたビニール袋にそれを入れて、大切そうに上着の中に隠した。
持っているのを見つかれば、それを奪おうとする輩さえいるのだ。
そうやって今までに何度も盗られた経験のある二人は、用心深かった。
「なつみ、ちょっと休もうか」
しげがそう言って路の端にある電柱の横に座り込むと、なつみも同じように座った。
二人の目の前を、きれいな格好をした人間が行き来する。
誰もしげ達を見ようとはしない。
見たとしても、眉をひそめ、すぐに目を逸らすのだ。
そんな反応にも二人は慣れていた。
「さあ、行こうか」
しげがなつみの顔を見て微笑む。
なつみはこくっと頷き、小さな体を立たせた。
「今度は自販機を見て回ろうか」
しげが良いことを思いついたというように、声を明るくする。
お釣りを取り忘れていたり、機械の周辺や下には小銭が落ちていることも多い自動販売機の見回りは、浮浪者仲間から教えてもらったことだった。
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