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小さなクリスマス
グツグツと、小さな土鍋が鳴く。
一人鍋に、一人酒。
テーブルの上のスマホには、LINEのメッセージすらない。
12月になって、もう何日経った?
今の時点で、素敵な人どころか、同性からすら誘われないなんて、今年もChristmasは、きっと一人で過ごすのだろう。
カーテンを滑らせ、袖口で曇った窓を拭く。
遠くに都心の明かりが見える。
一間の賃貸マンションから見える景色。
東京来て、もう五年になるのか。
指折り数えると感慨深い。
初めて来た当時は、生きることに必死で、感傷に浸る余裕さえなかった。
寂しく感じる暇があれば、違うことに使っていた。
今では、年末もお盆にも、私には帰る場所がない。
両親は小学生の頃離婚していて、それ以来パパとは会っていない。
ママは私が高校の時に亡くなった。
一人っ子だった私は、バアバに面倒を見てもらっていたが、そのバアバも、一昨年ホームに入居した。
部屋のラックには、まだ私が小さい頃に撮った写真を飾ってある。
そこには、バアバを含めた家族4人の笑顔があった。随分前の写真だ。
もう二度と揃わない4つの笑顔。
その横には、ダッフィーのぬいぐるみ。
サンタに頼んだ最後のプレゼント。
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