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聞き終わったおじいさんは悲しそうな顔をした。
当然だ。
信じたくないだろう。
信じてくれないかもしれない。
「そうか。そうだったんじゃな。」
「信じて、くれるの?」
「当たり前じゃ。ミケが命を削ってまで会いに来たんじゃ。信じるしかあるまい。」
「ありがとう、おじいさん。・・・僕が古書店を継ぐよ。それで一年以内に継いでくれる人を探す!」
おじいさんは微笑んだ。
あの大好きな顔だ。
「ありがとう。でもいいんじゃよ。彼等のことじゃ。ミケが継ぐと言ったらミケの身に危険が及ぶかもしれん。」
予想だにしていなかった返答に僕は戸惑った。
「で、でもおじいさん。大切なんでしょ?あの古書店が。」
「あぁ、でもいいんじゃ。ミケの命は無駄にはせん。この本を頼む。」
そう言っておじいさんはずっと大切にしていた一冊の本をミケへ渡した。
「この本を息子へ届けておくれ。この手紙も一緒にな。」
おじいさんは最期まで優しかった。
寿命の減った僕の身を案じて古書店を手放すことを選んでくれた。
そんなおじいさんの頼みごとだ。
「勿論、いいよ。この命おじいさんに捧ぐってあの時おじいさんに拾ってもらった時に誓ったんだ。」
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