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肌寒い秋風が時折吹き全身をひやりとさせる午前5時。 人気が全く感じられない。 かろうじて新聞配達のバイクのエンジン音が遠くから聞こえる。 この時間に散歩をするのが僕の日課だ。 寝ているほうがよっぽど有意義だろという人もいるが、まぁそれは価値観の違いだ。 寝ているのは勿体無い。 この朝の散歩は、この世界には僕しかいないんじゃないかと錯覚させる。 それは少し寂しくもあるが、この一時だけが面倒くさい人間関係や毎日強いられる仕事、生きるのにうんざりしてしまう世界から離れられるのだ。 そんなことを言っておきながら僕は別に毎日に退屈していない。 都心から少し離れた場所にある寂れた古書店に勤めながら、のんびりと生きている。 そこの古書店は優しいおじいさんが経営している。 息子さんは東京へ出てIT企業で活躍しているらしいがおじいさんとしてはこの古書店を継いで欲しかったらしい。 従業員はおじいさんと僕の二人だけ。 古書店は独特の雰囲気を放っている。 木造で、店内に幾つか置いているアンティーク雑貨がいい味を醸し出している。 その為興味本位で入ってくる人や、常連の年配者などでお客さんは少なくない。
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