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僕の体力は限界を迎えるところだった。 何で生きているのかわからなかった。 寒い中ただただ雨に打たれ、僕の世界は狭いダンボールの中だけ。 そんな時に僕の世界を広げてくれたのが偶然通りかかったおじいさん。 何人か通りすがってはいたけど見向きもしないか、汚い物を見る目で見ていただけ。 なのにおじいさんは何の躊躇いもなく僕を抱き上げた。 「可哀想に。寒かっただろう?さあ、うちへおいで。」 その瞬間白黒だった世界が一気に色づいた。 僕の生きる意味が見つかった気がした。 おじいさんの為に生きるんだ。 猫まんまを食べ終わった僕は銀の皿を口で咥えて流し台へ置きに行った。 おじいさんはずっと本に夢中だった。 毎日同じ本を読んでいる。 ここには沢山の本が置いてあるのに、どうしてこの一冊だけなんだろう? ずっと疑問に思っていた。 僕が人間だったなら、会話を交わすことが出来るなら聞くことができるのに。 お客さんが入ってくるのは大抵昼頃。 それまではずっとこんな感じ。 幸せそうに同じ一冊の本を読んでいるのをのんびりと眺めながら過ごす。 今日は天気が良い。 窓から差し込む日光を浴びてゴロゴロ。 光の当たるところと当たらないところ、まるでそこは別世界みたいだ。
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