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近所の公園に立ち寄りベンチに座った。
そして懐から思い出の一冊の本を取り出し優しく表紙を撫でた。
「そしておばあさんと約束したんじゃ。多くの人の思いを、わしらのこの古書店によってずっと繋げていこうとな。」
あの古書店を守りたいのは、おばあさんとの約束を守るため。
息子さんに継がせることも出来ただろうけど、優しいおじいさんは強要なんてしない。
従業員もいないこの状況では古書店を継ぐ人を探すことなんて無謀だ。
笑顔を見せてはいるがどこか不安を感じさせた。
「さあ、そろそろ店に戻ろうかの。あの古書店にも必要としてくれる人がいるでの。」
腰を重そうに持ち上げ、公園を後にした。
帰り道の階段、おじいさんが手すりを使い1段目をゆっくりと踏み出そうとしたその時だった。
おじいさんは誰かに背中を強く押され、階段から転げ落ちた。
おじいさん!
僕は鳴きながらおじいさんの元へ走り寄った。
身体を揺らしても意識がない。
次第に頭から血が流れてきた。
階段の上を見ると黒い影が走り去るのが見えた。
いやだよ、おじいさん。
あの店を守るんでしょ?
もう一度あの笑顔を僕に、見せてよ・・・。
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