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(……ああ……空しい) すべてが空しい。 おまえには何も残っていない。 おまえには何も残されていない。 見たろう、道行く奴達の顔を。 おまえの上位と四肢を見て、貧乏人の病人とでも思ったのか、振り返りもせず急いで避け去り、お前の言葉に耳も貸さなかった。 もはや人間の底辺なのだ。 否、人間としてすら見られぬのか。 一つをとり、他のすべてを捨て、その残した一つを奪い去られた。 巨竜に?王に?民衆?誰に。 誰に奪い去られたのか。 どうして奪い去られたのか。 ああ……この世は、一度のミスも許さぬらしい。 たった一度の大きなミスで、それまで積み上げてきたそれら全てを一気に奪うのだ。 輝かしい功績も、三十年間の鍛錬も、厳しい罵倒にも妻の処刑にも耐えた、ああその日々も、たった一日、たった一度のミスによって、奪い去られる。 この世界とはなんだ。 なぜこの世界に生きるのか。 これまで成してきたことすべてが消え、それでもなぜなおも生きようとするのか。 なぜなお竜へと向かうのか。 その先に何があるのか。 その先に何かあるのか。 一体何が。 一体何が。
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