自殺ブックメーカー

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「いくらだ?」 「何だと?」 「いくらで買うのかと訊いているんだ」 「下賤な輩よ。強欲にまみれた人間よ」 「居丈高に振る舞っても、今時だれも従わないぜ」 「驕り高ぶった人間よ。そんなに穢れた魂だから、未来を担う子ども達が自殺という安易な死を選ぶのだ」 「大きなお世話だ」  凱のレイジングブルが火を噴く。  だがすでに、バラキエルが稲妻の如く消えていた。 「その娘が自殺するのは天命。残り僅かな時間を逃げ回るが良い」  割れるような哄笑だけを残して、雷雲と共に声が去って行った。 「野郎ッ舐めやがって。おいジョリー、今のオッズはどうなっている?」 『はい凱様。大天使バラキエルの介入により、34対1で凱様が敗れ響子様が自殺する方が優勢です』 「勝ち目のないロングショットか。上等だな。裏口座を総動員して、俺の勝ちに5千億をライブベットに注ぎ込め」 「そうやって……金儲けをしてきたのね?」 「金儲けじゃなくて、これは生か死の戦いだぜ。それに命は金で買える時代だよ」 「自殺者の命を賭けているんでしょう。それなら、私の教え子が自殺したのも救えたんじゃないの?」 「残念ながら響子ちゃんの自殺した生徒は、スマホを持っていなかったから情報入手ができなかった。だから自殺予知は無理だったんだ」
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