自殺ブックメーカー

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「そう……。でも天使が手を下したかもしれないのね」 「それは否定できないが……」  私が暗い焔を眼に灯していると、凱が慌てて言葉を濁した。 「とにかく響子ちゃんの命が優先だ。あと1時間を逃げ切ればゲーム終了さ」 「分かったわ……」  眼を伏せながら答えたが、本当は心で叫んでいた。 (人の命を何だと思っているの! 校舎から飛び降りたあの子も天使の手に掛かったのなら、それを私が確かめてやる!)  復讐に燃える眼を走らせて、凱が車に乗り込む隙をついた。  反対車線に飛び出すと、走ってきたタンクローリーの前に立ち塞がる。 「危ないじゃないかッ、どうしたんだい?」  急ブレーキを掛けて止まった運転手に、私は泣くような声で訴える。 「すみません。お願いですから乗せてください!」 「痴話喧嘩だね。ほら、彼が追い駆けて来ないうちに乗りな」  助手席に乗り込む後方で、 「あっ、ちょっと待て!」  凱の慌てる声が聞こえた。だがもう遅いわ。 「災難だったね」 「でも助かりました」  前を向いて運転する中年の男に頭を下げる。 「困ったときはお互い様ですよ」 「あの、行き先ですが──」 「あなたの勤めていた中学校ですね」 「な、なぜそれを……?」 「それは、あなたがこの車で中学校に激突するからですよ」
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