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「慌てなさんな響子ちゃん。それよりも──」
凱が言葉途中で眼を細めて、ビルの窓を拭くゴンドラに乗る清掃員に視線を向けた。
「今日は良い日和ですね」
清掃員が帽子を押さえながら挨拶する。
「ああ、まったく狩り日和だな」
大きな拳銃を抜くよりも早く、清掃員の背から羽根が生える。そのまま人外の形相で飛び掛かってきた。
ズッオゥン──ズッオゥン──!!
拳銃が立て続けに火を噴き、銃弾を喰らった天使がビルの窓を破って吹き飛ぶ。その身体がまた燃え上がった。
「おいおい、天使もゴリ押しのご時世かよ」
呆気にとられる私を差し置いて、凱が拳銃の弾を装填しながらぼやく。
「……また燃えたわ」
「天使は炎から生み出されたからな」
「……君は何者なの?」
「君じゃなく凱と呼んでくれ。もしくは凱ちゃんかな」
「ふざけないでッ。こっちは自殺の邪魔をされたのよ」
「音羽響子、25歳。中学校の教師をしていたが、生徒がいじめを苦に自殺。その重荷を苦にして、自らも自殺を選択した──」
「なぜそれを……?」
顔面から血の気が引くのを感じた。
「響子ちゃんの自殺は、あらかじめ予知されていたのさ」
「自殺を予知ってどういう意味なの!?」
「それよりも、このドローンが降下しているのに気づいたか?」
「ドローン……このヘリコプターのこと?」
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