自殺ブックメーカー

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 プロペラが四方についた乗り物を眺める。こんな物見たことがない。 「これは中国が開発したEHang184を2人乗りに改造させた代物だ」 「もしかして燃料切れなの?」 「いいや。響子ちゃんの自殺予知が出たのが30分前だったので、急いでいたから情事の途中だった俺の高校の先生を乗せてきた。たまには野外もいいかなってね」 「情事の途中って……」  眼をパチクリさせていると、後ろから「どうも」と私と同じ歳くらいの女が顔を覗かせた。 「ちょっとあんた、いま高校って言ったよね。いったい歳いくつなの?」 「あんたじゃなくて凱。俺は17歳だ」 「淫行よ不純異性交遊! これって犯罪よッ!」  同じ教育者として憤りを隠せなかった。  そんな私を、凱は口端を上げながら眺める。 「自殺だって刑事的には過失致死罪が成立する犯罪だ。ここはお互いナイショにしようぜ。ウインウインでいこうよ」 「17歳って、その銃は何よ?」 「これはお目が高い。この大型リボルバーは、トーラス・レイジングブルM444。天魔を滅する44マグナム弾をぶっ放せる銃だぜ」  凱が手にもった銃を愛撫するように指を滑らせた。 「そういう意味じゃなくて……このドローンだって17歳で免許は必要じゃないの?」 「遠隔操縦できるからドローンと呼ぶんだぜ響子ちゃん」
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