自殺ブックメーカー

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「呆れた……」怒りで眩暈が。 「怒れるってことは生きている証さ。これで天使もチョッカイ出せなくなるだろうよ」 「その天使よ」説明してと眼で訴える。 「響子ちゃんは天使に憑かれていたのさ。その天使が言葉巧みに死へと誘っていたんだ」 「では私が自殺しようとしたのは……」 「勘違いするな。天使は自己愛に溺れた人の心の隙に侵入する。結局は弱い人間が悪いのさ」  厳しく断言されて、二の句が継げなかった。歳下の男に諭されるなんて恥ずかしい。穴があったら入りたいわ。 「やっと地上に到着したな」  気落ちする私を無視して、凱がドローンのドアを開けた。  高校の教師に別れを告げると、見たこともないヘンテコな自動車が目の前に停まる。さしずめタイヤのついた銀色のカマボコだ。 「運転手がいないのに走ってきたわよ」 「ベンツF015の自動運転システムさ」  観音開きのドアを開けて乗ろうとすると、 「君、ちょっといいかな?」  2人の警官が凱を呼び止めた。 「何ですか、お巡りさん」 「そこの見たこともないヘリコプターを放置されたら困るんだよね。それにこの車も君のかい? ちょっと免許を見せてくれないか」 「ちょっと待て」  凱が懐に手を入れながら答える。 (ちょっと17歳で運転免許を持ってる筈ないじゃない。まさか警官を銃で撃つつもりなの!?)
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