自殺ブックメーカー

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 私は内心焦りまくっていると、彼がスマホで話しはじめる。 「ジョリー、トラブルだ。沖田原を呼べ」 「おい、免許証を出せと言ってるだろうがッ!」  警官が怒りを露わに掴み掛かろうとすると、凱がスマホを差しだして告げる。 「電話に出ろとさ」 「何だと……?」  スマホを耳に当てた警官の顔色が見る見る青くなる。 「は、はい……しかし、こんな餓鬼……いいえ滅相も御座いません。委細了解しました」 「もう行ってもいいかな? 先生とデート中なんだよ」 「き、気をつけて行ってらっしゃいませ!」  警官2人が敬礼しながら叫んだ。 「……何をしたの? 沖田原って誰なの?」 「沖田原は警視庁の警視総監だよ」 「警視総監って……あなたの親戚なの?」 「いいや。俺の賄賂で、あいつが警視総監になった。だから何でも言うことを聞くんだよ」  まるで近所のオヤジのことを話すように答えた。 「呆れた……リアル中二病ね。あなた億万長者なの? もしかしたらジョリーって、お母さんかしら?」 「両親はとっくに墓の中さ。それにジョリーは人間じゃない」 「人間じゃないって?」小首を傾げる。 「正式名称は『DーWave3X』で、NASAが開発した量子コンピューターを俺用に改造させたAIだ。 ジョリーはスラングで、お気に入り中のお気に入りという意味さ」 「あっそ……」
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