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大学時代の友達が僕の家を訪ねてきた。名前は大槻と言う。
今は有線の仕事をしていると聞く。有線の仕事がどのようなものなのか、僕は知らない。
「広い家だな。さすが田舎」
と友人は言った。
「ここで一人じゃさびしかろう」
「うん、少し」
僕は認めた。しかし、さびしいのは嫌いではない。
「犬でも飼えばいいのに」
「いや、家主が犬嫌いでな」
僕は言った。開け放った窓の向こうの竹林から心地の良い風が吹いた。友人はそちらに目を向けて熱いお茶をずずずとすすった。
「逆療法ってやつか」
「ん?」
と僕。
「暑いときに暑さを和らげるのに熱いお茶を飲む」
「ああ、冷たいものは体に毒だからな」
「ところでお前さんの家主ってのは猫か?」
「うん、そう」
ふうん、と大槻は言った。
「そう言えば、ここに来るときも猫が一緒に乗ってきたな」
「まあ、田舎だからな。住んでるのはほとんど猫。人間は僕一人だ」
と僕は言った。「よくそんなとこに住んでるな」と友人は感心した。
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