2.隣町のエニ

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 大学時代の友達が僕の家を訪ねてきた。名前は大槻と言う。  今は有線の仕事をしていると聞く。有線の仕事がどのようなものなのか、僕は知らない。 「広い家だな。さすが田舎」  と友人は言った。 「ここで一人じゃさびしかろう」 「うん、少し」  僕は認めた。しかし、さびしいのは嫌いではない。 「犬でも飼えばいいのに」 「いや、家主が犬嫌いでな」  僕は言った。開け放った窓の向こうの竹林から心地の良い風が吹いた。友人はそちらに目を向けて熱いお茶をずずずとすすった。 「逆療法ってやつか」 「ん?」  と僕。 「暑いときに暑さを和らげるのに熱いお茶を飲む」 「ああ、冷たいものは体に毒だからな」 「ところでお前さんの家主ってのは猫か?」 「うん、そう」  ふうん、と大槻は言った。 「そう言えば、ここに来るときも猫が一緒に乗ってきたな」 「まあ、田舎だからな。住んでるのはほとんど猫。人間は僕一人だ」  と僕は言った。「よくそんなとこに住んでるな」と友人は感心した。
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