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「ところで、あのタヌキは?」
大槻は少しだけ開いたふすまを指差して聞いた。奥の間に置いてある信楽を言っているのである。
信楽は玄関から、めったに使わない奥の間に移してあった。
「あれは猫の物だ。貴重なものらしい」
「ふむ、普通の信楽に見えるがな」
と大槻は言った。僕は肩をすくめ
「さあ、わからん。ただ、なかなか愛嬌のあるやつだ」
そこで、玄関のチャイムが鳴った。出てみると、見知らぬ猫である。
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