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「ここに、髪の長い女の人がいるだろう」
と猫は言った。茶色いトラ模様のつんとした猫である。
「ああ、いるが。何か用か?」
僕がそう言っているそばから後ろから大槻が顔を出して
「あ、バスの」
と言った。どうやら彼女がバスで出会った猫であるらしい。
「私に何か用か?」
「ああ」
と猫は言ってずかずかと部屋にあがりこんで座った。僕はあわてて座布団を出す。
座布団からはみ出た尻尾を見ると、かぎ尻尾であった。
僕はお茶と鰹節を用意し、ふるまった。猫は大槻に向かって
「実は当方貴女にお願いがあるのだにゃあっつぁ!」
「あ、すまん」
僕は間違えて熱いお茶を出してしまっていたことに気付いた。
急いで氷を入れてやると猫は確かめるように二三度ぺちゃぺちゃしてからようやく一口飲んだ。
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