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「気をつけてくれ」
と猫は言った。
「それで、お願いと言うのは、貴女の靴を貸していただけないだろうかと言うことなのだ」
「靴ですか?」
と大槻は聞いた。
「そうだ」
「しかし、どうして?」
「あれがちょうどいいのだ」
「ちょうどいいとは何に?」
猫はしばらく黙りそのあと顔をあげてあまり答えになっていないようなことを言った。
「実は今日、大井川河川敷で決闘があるのだ」
「決闘か」
と僕。耳慣れない言葉であった。
猫は神妙にうなずいた。
「一体何が原因で?」
と僕は聞いた。
「極めて個人的なものだ。他人様を巻き込むことはできない。よって原因を話す必要はない」
猫はかたくなな表情である。
「そしたら」
大槻が言う。
「靴を貸す条件として、今日の何時に決闘があるのか教えてくれませんか?」
「どうして?」
「興味があるからです」
大槻の目が輝いていた。僕は大して興味はなかったが、大槻に付き合わされ、結局決闘を見に行くことになる。
そもそもチャトラ猫が大槻の押しに負けて決闘の時間をはいてしまったのが悪いのであった。
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