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チャイムがなり、玄関を開けると猫がいた。
「にゃあ」
と僕が言うと
「ちょっと今それにつきあってる暇はないんです」
と言われた。
「急ぎか?」
と聞くと「にゃあ」
「まあ、あがれよ」
僕は猫を家に上げた。
季節は夏。戸を開け放った日本家屋は意外なほど涼しい。
裏が竹林になっているのもこの涼しさの要因かもしれない。
「急ぎの用と言うのは家賃のことなんです」
と猫は言った。
「家賃か」
と僕はとぼける。
「そんなものもあったな」
「あったな、じゃありません。如月さん、一体何カ月滞納するつもりですか?」
家賃の滞納は六ヶ月目。目の前この猫はヘイハチといって、僕が住んでる家の持ち主、つまり大家である。
「急ぎと言ったな。金がいるのか?」
「そうです」
「まずはそっちのほうを聞こうじゃないか。力になれるかもしれん」
僕は立ちあがり、ぬるいお茶を入れた。
お茶菓子として鰹節を出すとヘイハチは態度を和らげた。
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