1.大家ヘイハチ

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 誤字が多いが、どうやら誘拐犯からの手紙である。  カレンダーを見ると今日は七月の三十日であった。 「息子ってのはどの?」 「三番目の息子、カイです。気づいたらいませんでした」 「この、南山連合ってのは?」  猫は首を振った。 「わかりません」 「心当たりはないのか?」  ヘイハチはしばらく考えていたが、ついに首を振り 「ありません」  と言った。 「では息子がいつさらわれたのかもわからないな」  猫はうなずく。  僕は困り果ててしまった。  あいにく、今手元には金がない。ここの家賃が月一万五千円で、これを六カ月滞納しているわけだから合計九万。  あいにくそんな金はない。  僕がその旨を伝えると、猫は泣き出した。 「どうしてくれるんですか。私の息子の命がかかってるんですよ」 「まあ、そう言われても。しかし、これぐらいの額なら猫、自分で払えるんじゃないか?」 「それが、最近大きな買い物をしまして、今すっからかんなのです」 「何を買ったんだ?」  僕が聞くと猫は恥ずかしそうに 「信楽焼です」  と答えた。
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