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お店を出てからずっとマスターの言葉が頭から離れなかった。
樋山くんの気持ちなんて私にはこれっぽっちもわからない。
でも、マスターの言う通りこのまま引き下がってもいいのだろうか。
私、彼にきちんと気持ち伝えた?
「あら佐和、おかえり。遅かったわね。ご飯出来てるわよ」
「お母さん、」
「ん?」
「やっぱり、ロンドン行ってくる」
「いいじゃない。いつから?」
「今から、」
「えぇ!?あ、ちょっと!佐和!」
パスポートと財布と、簡単な身支度を済ませると私は母の制止を振り切り家を飛び出した。
行かなきゃ。彼に会って素直に伝えなきゃ。
例え手遅れでも。
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