「早くあなたの口から好きだと言わせたい」

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あの調子だと、スマホを見ているところは見られていないみたい。よかった。 やっぱりどんな理由があれ、下手に人の物に触るもんじゃないな。妙な罪悪感にかられる。 しゃかしゃかと卵をかき混ぜながら一人自問自答を繰り返していた。 「いい匂い」 するとさっきよりキリッとした顔で樋山くんが戻ってきた。そして嬉しそうに卵焼きを作る私に近づいてくる。 「座って待ってて」 「やだ」 ……やだって。子供か。 「邪魔だから」 「だって佐和さんの後ろ姿、すげー色っぽいんですもん。やっぱり女の人が台所に立つ姿っていいですよね」 そう言って腰に手を回してきた。 百歩譲ってこれは許すとして、せめて服を着てくれ。何で上半身裸なんだ。
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