「早くあなたの口から好きだと言わせたい」

35/36
12654人が本棚に入れています
本棚に追加
/419ページ
「焦げたら樋山くんが責任持って食べてよね」 「焦げてなくても全部俺が食べます」 クスクスとあの声で耳元で笑う。 朝っぱらからぞくぞくと泡だつようなことはやめて欲しい。変な気分になる。 「佐和さん」 「ん?」 「好きです」 「……」 「俺、今すげー幸せ」 そう言って回された手に力がこもり、ぎゅうっと抱きしめられた。 こんなの、情事のあった翌朝によくあるワンシーンにしかすぎない。それなのに、慣れているはずなのに胸が勝手に早鐘を打ってしまう。 極上の男はいくら鉄壁を張っても、それを剥がす術を兼ね備えているんだ。油断すると持っていかれそう。 「もう一回」 「ダメに決まってるでしょ……っ、んっ、」 「出勤時間までまだあります」 ……もう、この男は。
/419ページ

最初のコメントを投稿しよう!