「プライドの意味、はき違えないでください」

10/14
前へ
/419ページ
次へ
「佐和さんは、休暇中ってことはどこか行かれる予定なんですか?」 オフだからか。珍しくマスターが自らそんな質問をしてきた。 「あー……ううん、実家にいるだけ。でもダラダラしすぎだって親に追い出されちゃって。行くあてがなくてなんとなくここに。まぁ今は充電中って感じかな」 「充電中、ですか」 「あの時、聞こえちゃってたよね?私、樋山くんと別れたの」 「……」 「結婚するんだって、すごく良いところのお嬢さんと。私ってつくづく選ばれない女だよね。こんなことが二度も続くなんてさぁ。最後はいつも捨てられる……」 だからあの時誓ったのに。もう結婚も恋愛もしないと。 それなのにまた同じことを繰り返して。バカだ、本当。 「あ、ごめんね。昼間からこんな変な話して」 忘れて、と目の前に広がった空を眺めるマスターに慌てて謝った。 「佐和さんのことすごく好きそうに見えたのに」 するとポツリとそう言ったマスター。私はえ?と、水滴の流れるグラスを握りしめマスターを見た。
/419ページ

最初のコメントを投稿しよう!

12739人が本棚に入れています
本棚に追加