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「あなたをすがらせたかった」
彼女の言葉に後押しされるように海の向こうに飛んだ。
きっと落ち込んで帰国するだろうが、味方でいてくれる人がいる。そう思うと心も身体も前に進めた。
飛行機やバスを乗り継ぎ数十時間。
拙い英語を駆使し、なんとか透子に教えてもらった住所までたどり着くことができた。
日本でいうオフィス街であるここは、イギリスらしい建築物に、活気付いた人々で溢れかえっていた。
雑誌やテレビで見るよりはるかに趣があって、息を呑むほど素敵だった。
樋山くんのいる建物もその中の一つにあった。歴史的で日本なら重要文化財に指定されてもよさそうな建物。
私はそれを眺めながら、口元にキュッと力を込めた。
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