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「それって自分の仕掛けた落とし穴に落ちたようなものじゃない。うけるんだけど」
うるせぇな、わかってるよ。自業自得だよ。
「なるほどー、それで落ち込んでたんだ、渉。可愛いなぁ、お前。つか、誤解されたままロンドン行っていいのか?」
さぁ……。よかったのか悪かったのか。今もわからない。
わかるのは彼女は俺がいなくても、いつものように仕事をこなし、いつものように過ごすということ。
そしてそこに少しの痛みも存在しないということ。
「やだ、じゃあ私もしかすると今日すごい嫌味なこと言っちゃったかも」
突然何かを思い出したようにそう叫ぶと、口元を覆い、眉間に皺を寄せた美月。俺はすぐにどういうこと?と聞き返した。
「今日佐和さんに会ったって言ったじゃない?その時そんなことがあったなんて全然知らなかったから、ジュエリーショップの前で結婚式来ないかとか、ずっと片思いしてて、なんて言っちゃったのよ。間違いなく誤解してるよね。ていうか、私悪役じゃん」
超ー嫌なんだけど、とぶつぶつ零す美月を前にふと思い出した。
そういえば昼間俺と会社で会ったとき、謝ってよ、とすごい冷たい表情で言ってきた。それは少しの前の佐和さんのようだった。
なるほど、美月からそんな事を聞かされた後だったのか。なんとなく辻褄があう。
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