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「でも真実味が増してよかったかもね。悪役は嫌だけど。もしかしたら今頃すっごいモヤモヤしてるかもよ?」
頬杖をつき、トロンとした瞳で俺を見ながらニヤニヤと笑う美月。そんな単純なはずがない。
普通の女性なら揺さぶる材料になりうるかもしれないが、彼女にはそんな小細工も効かないだろう。
きっとあっという間に彼女の中から排除されてしまったはず。
現にロンドンへ行くと言ってもなにも動じなかったし、終いにはお幸せにと快く送り出されたのだから。
「でもまぁ、もうあれこれ考えたって同じよ。成るようにしかならない。私もそうだったし」
そうため息混じりに言う美月は、押して押しての10年だ。ここまですごく長かっただろうし、精神的にボロボロだった時期も知っている。
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