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「親父さんが聞いたら泣くぞ。美月のこと溺愛してるのに」
「いいの。そうまでして欲しかったんだから。何度もプライドズタズタにされたけど、好きだから何度も追いかけちゃうの。心がそうさせるの 」
そう言う美月の視線の先には陸。その横顔はすっかり女の顔をしている。
だがこんなにも必死だった美月とは反対に、兄貴は相変わらず。
さっきまでここで一緒にテーブルを囲んでいたのに、いつの間にかワイン片手に夜景でも眺めている。そこらへんにいる野良猫より自由で呑気だ。
大学卒業する間際、突然会社なんて継がない。世界を旅してまわるんだと言って家を飛び出し、数年間好き勝手していた陸。
みんなに心配かけて、たくさんの人を振り回した。
そんな陸が今ではなんだかんだ専務という役職に就き、うまく会社を回している。あの頃の陸が嘘のようだ。
でもそれはもしかすると美月がいたからかもしれない。
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