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◇
「やっ、ん……くすぐったい。離して」
「無理。佐和さん、柔らかくて気持ちよすぎなんだもん」
「ふふ……もう、」
あのじれじれとまどろっこしい日々から月日は流れ、俺はロンドン支社から日本に戻ってた。俺たちは飽きもせずいちゃつく日々。この日をどれだけ待ちわびていたことか。
あの日、大丈夫だとお互いに言い聞かせるように空港で別れたが、やはり一年という遠距離は簡単なものではなかった。
会いたくて、触れたくて、頭の中はいつも彼女のことで一杯で。それが容易でないことはわかっているのに、心が頭に追いつかず苦悩した。
彼女に触れる夢を何度見たことか。寂しいと電話口で一度だけこぼした彼女を、どれだけ不安にさせていたことか。今思い返しても胸が詰まる。
だが今俺らはそれを乗り越え、いつでも彼女を感じられる距離にいる。今、俺はすげぇ幸せだ。
「ねぇ、いい加減起きよう?遅刻する」
「もうちょっと」
「ダメだって、」
タイムオーバー、と言ってしつこくせがむ俺を無理やり引き剥がすと、彼女は体を起こし俺を優しく睨んだ。
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